概念
債券価格と利回り
債券のキャッシュフロー、価格と利回りの逆関係、durationとcredit spreadの基礎。
要点
債券の表示利回りは、将来収益の保証ではありません。価格、クーポン、満期、信用スプレッド、再投資条件を分け、利回り変化の**原因**まで確認します。
これは何か
- **額面(face value)**: 満期に返済される契約上の元本。
- **クーポン**: 定期利払い。クーポン率は年クーポンを額面で割る。
- **満期(maturity)**: 元本返済日。
- **市場価格**: 将来キャッシュフローを現在の市場条件で評価した売買価格。
クーポン率、現在利回り(年クーポン÷市場価格)、満期利回り(YTM)は別物です。YTMは契約どおり支払われ、満期まで保有し、中間クーポンを同じ利回りで再投資できるという前提を含む総合的な割引率です。
仕組み
固定クーポンは市場金利が変わっても変わりません。同等の新発債の利回りが上がると、古い低クーポン債は価格を下げないと競争できないため、価格と利回りは逆に動きます。
**架空例1:** 額面100、年3のクーポン、残存1年の債券を考えます。市場が満期の103を4%で割り引くなら価格は `103÷1.04≒99.04`。利回り上昇で約0.96の価格損が生じます。途中売却なら、正のクーポンがあっても値下がりが上回り、総収益はマイナスになり得ます。
クーポンを受け取った後の運用利回りが下がる危険が**再投資リスク**です。YTMどおりの収益を実現できるとは限らない理由の一つです。
デュレーションとコンベクシティ
デュレーションはキャッシュフローを受け取る時間を加重した尺度です。修正デュレーションは、小さな利回り変化に対する価格変化率を概算します。例えば修正デュレーション2なら、利回りが1ポイント上がると価格は概ね2%下がる、という一次近似です。
**架空例2:** 修正デュレーション2の短期債と8の長期債に、同じ0.5ポイントの利回り上昇が起きたとします。概算損失は短期債約1%、長期債約4%。実際はコンベクシティという曲率が補正し、大きな金利変化ほど直線近似とのずれが増えます。
何を観察するか
債券の**総収益**は、クーポン収入、価格変化、再投資収益、信用損失等の合計です。表示YTMだけを収益と同一視しません。短期債は政策経路、長期債は成長・インフレ不確実性、供給、タームプレミアムへの感応が相対的に大きくなり得ます。
社債利回りは基準となるTreasury利回りと**信用スプレッド**に概念上分けられます。同じ社債利回り上昇でも、国債金利上昇と信用不安によるスプレッド拡大では意味が違います。
よくある誤解
- 「債券利回り上昇」は原因を示さない。政策期待、成長、インフレ、供給、流動性、信用の候補を分ける。
- 満期が同じでもクーポン、信用、組込みオプションで感応度は違う。
- 満期保有でも発行体の不履行、インフレ、再投資、機会費用は消えない。
実務での使い方
まず年限、名目か実質か、国債か社債かを特定します。次に価格と利回りの方向、カーブのどの部分が主導したか、信用スプレッドを確認します。それでも債券の動きは金や株の命令ではありません。最終判断はmarket-structure、horizontal-levels、価格による無効条件へ戻します。
注意点と根拠の限界
価格と利回りの逆関係は契約キャッシュフローに基づく価格計算です。一方、市場反応の原因推定は解釈であり、複数要因が同時に動きます。