概念
名目金利と実質金利
名目利回り、実質利回り、期待インフレ、TIPSとbreakevenを区別する。
要点
名目金利を一つの数字として読まず、実質金利、インフレ補償、プレミアムの候補へ分解します。TIPS実質利回りとブレークイーブンも純粋な期待値ではありません。
定義
**名目利回り**は通貨額で示す利回りです。**事前実質利回り**は将来の期待インフレを差し引いた概念、**事後実質利回り**は実現インフレを使った結果です。予想が外れれば両者は一致しません。
TIPSは元本がCPIに連動する米国債です。市場で観察するTIPS実質利回りは、インフレ連動キャッシュフローの実質ベースの利回りです。同年限の名目Treasury利回りとの差が**ブレークイーブン・インフレ率**です。
名目利回り変化の分解
| 観察項目 | 概念上の寄与 | 注意点 |
|---|---|---|
| 実質利回り変化 | 実質成長・政策経路・実質割引率 | TIPSにも需給がある |
| インフレ補償変化 | 期待インフレとインフレリスク対価 | 純粋な予測ではない |
| 残差・プレミアム | 流動性、需給、測定差 | 日中の厳密な恒等式ではない |
`名目利回り変化 ≈ 実質利回り変化 + インフレ補償変化 + 残差` は**概念的な帰属枠組み**です。異なる証券の観測値を使うため、正確な日中会計恒等式ではありません。
ブレークイーブンが予報ではない理由
名目債の保有者は予想外のインフレを負担するため、インフレリスク・プレミアムを要求し得ます。名目債とTIPSは市場の厚み、需給、税・指数連動の仕組みも違います。したがって差には平均インフレ期待だけでなく、リスク対価と流動性差が混ざります。
方向の組合せ
- 名目↑・実質↑・ブレークイーブン横ばい: 政策経路、実質成長、タームプレミアム候補。
- 名目↑・実質↓・ブレークイーブン↑: インフレ補償上昇が名目を主導した候補。
- 名目↓・実質↓: 緩和経路、成長悪化、安全需要など複数候補。
- 名目↓・実質↑: インフレ補償の低下がより大きい可能性。
資産価格への接続
実質利回りは、利息を生まない金や遠い将来キャッシュフローの機会費用・割引率を考える一要素です。しかし実質金利上昇と同時に成長期待が改善したり、金への構造需要が強まったりします。方向だけを売買シグナルにしません。
実務での使い方
名目10年、TIPS実質10年、5年・10年ブレークイーブンを同じ時間窓で比較し、どの成分が先に動いたかを記録します。原因仮説はドル、カーブ、信用、イベント反応で反証し、最後は価格構造へ戻します。
注意点と根拠の限界
TIPSの制度定義は公式資料で確認できます。分解値から短期の金・株方向を予測する関係はレジーム依存で、confidenceは上げません。